日本語教育研修プログラム体験記
ALLEXのポートランド州立大学で日本語を教えながら、修士課程で日本の伝統劇を学んでいる西山と申します。外資系IT企業やクラシック音楽・舞台関連の仕事で10年近い社会人経験を経た後、ALLEXにて渡米し現在2年目に入ったところです。
今回の投稿は、以下の方々に参考になるかと思います。
ALLEX Teacher Training Instituteで何を学べるか知りたい人
プログラム修了後、アメリカで日本関連の教える仕事に就きたい人
ALLEX Teacher Training Instituteの体験談とのこと、以下お題毎に書いて行きます。
Q. What were the most memorable experiences in the program?
講師陣の皆様の授業がとても印象的でした。
日本語教育の概要のクラスがあったのですが、とても勉強になりました。
私はALLEXで渡米する前までは、全く日本語教育の経験どころか教育学を学んだの経験が全くなかったので、すべてが新しく興味深かったです。ALLEX Teacher Training Instituteでは、東アジア言語を学ぶアメリカ人の学生を実際に教える実践的な教授法を訓練します。加えて、クラスでは各種のアジア言語教育の研究の概要が学べます。アメリカの大学のクラスで教える日本語はどこを目指すのが良いのか、学習者にとって効果的なカリキュラムの組み方、どのように外国語能力を測るかなど、日本語・中国語・韓国語言語教育に関する研究に裏付けられた実践的な内容のクラスです。
ALLEXや私がGTA(Graduate Teaching Assistant、院生のTA)として教えるポートランド州立大学では、Performed Culture Approach(以下、PCA)という教授法を取ります。PCAでは、日本語の場合、日本に行った時に、日本人にストレスを与えることなくコミュニケーションを円滑に行えることを目指します。当教授法の基礎をしっかりと学べたのは実用的かつ勉強としても興味深かったです。
Q. How did the summer experience change you?
まず、日本語教授の皆様に教わる中で2ヶ月間一緒に時間を過ごさせていただく間、自分が日本語教育に今後ずっと関わっていきたいのかを考える良い機会になったと思います。
語学を教える大先輩がこんなに一つの場所に集まる場所は他にないと思います。しかも、わざわざ自らが現場でどういう風に工夫して教えているかを教えてくださります。自分の派遣先に行ってみると分かりますが、もちろん皆さん語学の先生方は親切で熱心な方々は多いのですが、何しろ授業や研究で忙しいですから、じっくり私達後進教師のために時間を取ってトレーニングを行う機会はあまり多くはありません。自分で盗みに行かなくても、授業で解説して教えてくれる!こんな場所はなかなかないです。
今だに、言語を教えるのは難しいなと発見ばかりの毎日ですが、私が一人のTAとして機能できているのは、もちろん所属長や周りのTAの助言のおかげもありますが、ALLEX Teacher Training Instituteのトレーニングが相当大きいなと思います。ポートランド州立大学の場合は、ALLEXでの訓練とほぼ同じ教授法で教えているので、昨年の夏の研修の教え方そのままで一年間教え続けて来たようなものです。
派遣校ごとに様々な教授法が採用されているため、PCAをあまり使わないALLIESの方もいるとは思うのですが、授業の中で一部取り入れるだけでも学生の学習効率を上げることが出来ると思います。
Q. What did you learn about your native language?
とにかく言語教育がどれだけ難しいかが分かりました。私達が英語を学習した際、冠詞や前置詞がややこしいと思うのですが、それと同じ様な状況が起きます。なぜ、ここはonでなくてinを使うのか。なぜ、ここではaでなくtheを使うのか。みたいなものです。
例えば、派遣先の日本語のクラスでは、「ここのハンバーガーはおいしいんですよ。」という文の、この「んです」とは何なのか。この最後の「よ」とは何なのか、の様なことを教えることになります。日本語教育の経験がある方は分かるのかもしれませんが、私の場合は、教える前に自分自身が毎回日本語を学び直しています。
言語は奥深いなと思ったと同時に、こんな大変なことをいつも熱心に教えていらっしゃること対し尊敬の念を深めました。
Q. What advises would you give to future ALLIES?
私が出来る一つのアドバイスは、渡米に際しての自分自身の目的意識を明確に持つことです。そうすれば、ALLEX Teacher Training Instituteでも、より学ぶことが多いのではないかと思います。私自身の例で具体的に言うと、キャリアの進路を明確にすることが出来ました。
ALLEX Teacher Training Instituteでとてもありがたかったのは、自身の方向性を定める上で参考になる意見をTom Masonさん、野田先生、糸満先生、桃原先生、三木先生、講師陣やALLEXスタッフの皆様に伺えたことです。そこで得られたアドバイスに基き、現在TAとして教えながら、修士の修了に向け勉学に励んでいます。
夏のトレーニングの終わり頃、先生方やALLEXのスタッフの皆さんに、キャリアアドバイスを受けることが出来ます。アメリカのビザの問題やキャリア上の戦略的な舵のとり方などを教えてもらえます。ただ、これは一人一人やりたいことや進みたい方向性が違うので、自分から聞きに行かないと、講師陣の皆さんも教えようがありません。
かっこいいアドバイスを書いておきながら、この場で白状してしまうと、私の場合は、大枠で日本の舞台もしくは日本語の教授として働きたいと決めていたものの、実際どのようにしてアメリカで職を得るのか暗中模索の状態で渡米しました。
誤解を招くといけないので書きますが、もちろん選考面接では可能な限り準備して回答しました。ただインターネットや書籍などで情報を探したのですが、自分の状況にぴったり合う体験談や情報は限られていたので、実際どのようにこれから準備、勉強をしていけば良いのかが全然分からなかったのです。
私が選考を受けていた当時どういった状況だったかというと、選択肢が3つありました。①日本の演劇の先生、②日本語教師、③舞台プロデュースを続けること、です。
①は、日本の舞台の研究と教える仕事がそもそも外国人の私に出来るのかよく分からなかった。
②は、日本語教師の仕事が自分に合うのか、これからやって行きたいのかを試してみたかった。
③は、前職で仕事をする中で、私がやりたいこととズレている気がしてきていました。詳細は省きますが、ALLEXの選考を申し込んだ時点では、舞台プロデュースの道をこれまでの延長線上で進むのがいいのかと思い、アメリカに行って舞台プロデュースを学べる学校で修士を修める予定で選考に応募しました。
書類選考通過の通知をいただき、面接の準備をする中、自問自答したり、以前の職場の先輩に相談をしたりしながら、自分が何をしたいのか考えて行きました。
そして、散々迷った結果、面接では、日本の演劇と日本語教育が学べる学校が良いと伝えました。申し込み時点で出していた希望と異なるので、面接で赤松さんとDavid Pattさんが少し混乱していて、、、せっかく準備して面接に臨んで下さっているのに、急に意見を変えて申し訳ない、普通に考えたら選考通らないだろうなと思っていました。
でも、ご縁がありポートランド州立大学で、日本の伝統劇(歌舞伎、文楽、お能)を学べる修士課程でのオファーを頂きました。ただ、その時点では、進学先・派遣先が決まっただけで、その後具体的にどういったキャリアを築いて行けるのかまったくぼんやりした状態だったわけです。
ALLEX Teacher Training Instituteの終わり頃キャリアセッションの時間にThomas Masonさんに相談した際、日本文学の修士の取得とTAとして2年間日本語を教える経験は、将来PhD出願(PhDは文学の教授には必須)する際、文学の教授として就職活動する際の武器になると教えてもらいました。今一年目が終わり、二年目に入ろうとしていますが、これらのアドバイスに基づき就学しているのが私の現状です。
あと、もう一つ大切なアドバイスを忘れていました!セントルイスのブルースは素晴らしかったです!興味ある人は是非聞きに行ってください。